大会での上演 照明③     

調光卓
劇場での照明は、調光卓によって操作します。
コンクール(大会)では部員による操作に限られますので、調光卓の操作に慣れておくことは重要です。
ただし、ミキサーを自校で購入して本番さながらの練習をすることも可能な音響操作と違い、 ふだんの練習から本物の調光卓を扱える学校は多くありません。
(大会前に紙やベニヤで「練習板」を作って操作の練習をしている部もあります。)

基本的な仕組み
群馬県内のホールに入っている調光卓の一般的な仕組みと使い方を解説してゆきます。 本格的な調光卓は非常に多機能なのですが、とりあえず高校演劇でよく使う機能に絞って解説します。

(タップ/クリックで拡大されます)

マスターフェーダー
音響卓と同じく、全出力を最終的に制御しますが、通常は操作しません。 (上図でも省略しています)
プリセットフェーダー
20~30個ほどのツマミ(フェーダー)が並んでいます。 各ツマミが、ひとつのチャンネル(一種類の照明の光量を上げ下げできる単位)とつながっています。
2段または3段あり、各段の同じ位置のチャンネル(ツマミ)は、同じ機材とつながっています。

クロスフェーダー
フェーダーが2つ並んでいて、多くの製品は、A=左側がUP(上げると100%)、B=右側がDOWN(下げると100%)となっています。
この形状により、ABのツマミを同時に上げ下げすることで「クロスフェード」を簡単に実現できます。
プログラム操作(打ち込み)では働きが異なります。
プログラム~A/Bが現在キュー、次キューを進めるスイッチとして働きます。

マニュアル操作
プリセットフェーダーの「段」とクロスフェーダーA/Bの組み合わせによって、円滑なシーン替えを実現します。
「出力0になっている段でシーン作りをして、切り替え」が基本です。
プリセット2段を使った操作例
キューシート
シーンきっかけCLFR地生地青TsusSS……
幕開け緞帳UP 0 0 0 0 7 0……
第一場花子移動 9 810 0 0 0……
第二場爆発SE 0 0 0 8 010……
暗転 太郎退場 0 0 0 0 0 0……
第三場二人板付 9 810 0 0 0……
クロスフェーダー


「基本明かり」の段をなるべく崩さないようなプリセットのプランを作るとか、複雑な照明のシーンから複雑な照明のシーンへ作り替えるための時間的余裕はできそうかという見通しには、ある程度の慣れと経験が必要です。
複雑な照明をバンバン切り替えたいなら、プログラム(シーン記憶)を検討してください。
一方、「Tサスを1本足す」程度の操作であれば、生きている方の段のプリセットフェーダーを直接いじればよいのでマニュアル操作の方が簡単です。また、アドリブや緊急事態への対応が比較的自由にできるというのもの利点です。

メモリー(打ち込み)
リハ―サル時にすべてのシーンを「キュー」として記憶させ、上演時にそれを呼び出します。 実際の記憶作業は会館スタッフの方が手伝ってくれるので、技術的な面での心配はあまりありません。
複数の学校が打ち込みをする場合、自校のキュー№と調光卓のキュー№はズレます。
(キュー№何番から使うことになるかは、リハ当日に決まることが多い。)

操作例
キューシート
(自校のキュー№1~ → №51~に設定)
シーンきっかけCLFR地生地青TsusSS……
51幕開け緞帳UP 0 0 0 0 7 0……
52第一場花子移動 9 810 0 0 0……
53第二場爆発SE 0 0 0 8 010……
54暗転 太郎退場 0 0 0 0 0 0……
55第三場二人板付 9 810 0 0 0……
クロスフェーダー



リハが無事に終了しさえすれば、本番はクロスフェーダーのツマミを上下に動かすだけです。 微妙な色加減まで正確に再現してくれる、何個もの照明を使うシーンが連続していてもミスなく瞬時に切り替えられるなど、多くの利点があります。
一方で、短所もあります。
キューを入力するのに時間がかかります。暗転、灯体一つ分の変化でもキューを一つ作る必要があり、複雑な照明プランを作ると、リハの多くの時間を色作りに当てねばなりません。しかも、すべてのキューを入力し終えないと本番を迎えられません。
また、芝居は生き物ですから、役者の勘違いやアドリブ、あるいは緊急事態などで役者の立ち位置が変わったりシーンが飛んだりすることもあるかもしれません。メモリ操作メインの場合、そういう変化への柔軟な対応はマニュアル操作と比較すると不自由です。

照明台本・キューシート
上演時、照明係は常に舞台、台本、キューシートを代わる代わる見続けます。 特にマニュアル操作の場合、短い時間で複数のツマミを上げ下げしなければなりません。 複雑な照明プランを実現するのであれば、複数人欲しいところです。
基本となる照明+暗転がある程度であれば、照明台本に書き込みをする程度で対応できるでしょう。



複雑な処理をする場合は、照明キューシートを書きます。
特に、メモリー(打ち込み)で操作するのであれば、リハ―サルの時に、スタッフの方に照明プランを正確に伝えるためにも是非用意してください。
一度記憶したシーン(キュー)はコピーできるので、キューシートにあらかじめ書きこんでおく(例えば「№12は№9のコピー」など)と、色作りの時間を大幅短縮できます。
大会では出場校打合会後に「フェーダー番号表」が手に入りますので、それに合わせて完成させておくと、これもリハの時間短縮になります。