音響の基本⑤         

音声データファイル形式
PC等で音声データを扱う時のフォーマット

WAV ~Windows標準のCD音質形式。10MB/分程度。
AIFF~MAC標準のCD音質形式。(同上)
MP3 ~不可逆圧縮。実用サイズはWAVの10%前後。
WMA ~Windows標準の不可逆圧縮形式。MP3より高圧縮。
AAC ~Apple標準の不可逆圧縮。サイズはWAVの数%前後。
M4A ~内部的にはAAC形式。

不可逆的とは?
WAV形式なら音質がよい、とは限りません。
MP3形式のデータを元に、PCのソフトウェアなどを使ってCDプレイヤーで再生できるCD-Rを作成すると、 そのCD内では再びWAV形式に変換されています。
ただし、MP3形式からWAV形式にファイルを変換しても、一度削った音質は戻りません。 無駄にファイルサイズをデカくするだけです。
サンプラー(SP-404SX)は内部的にWAV形式でデータを保持していますが、 再生機器からの出力(PHONEまたはLINE-OUTから)をLINE-INから取り込む方法だと、 オリジナルCDの音質がキープされているわけではありません。

タブレットPC・スマホの活用
近年では、タブレットPC(またはスマホ)+サンプラーアプリによる音出しが利用され始めています。

 組み合わせの例(値段は2019年時のもの)
<iPad系>
iPad+アプリ:KLANG2 (1,400円)
iPad+アプリ:CueZy9 Pad Sampler(実質的には960円)
iPad+アプリ:S4 Pad (240円)

※iPadへ音楽データを送り込むのに、別途 iTunes が必要
(つまり iTunes をインストールするPCも必要)
<Android系>
タブレット+アプリ:サンプラー5 Pro (2,700円)
スマホ  +アプリ:効果音ポン出し (無料)

※Android端末に音楽データを登録するための知識がある程度必要
 (Android端末でファイル操作アプリを使ったり、PCに
  Android端末を接続してファイルコピーしたりする技術)

多くのサンプラーアプリで、SP-404SX などでは難しかった
・スタートポイント/エンドポイントの微調整
・パッド別の音量設定、再生中の音量変更
・クロスフェード
といった操作が、画面上のタッチ操作で比較的簡単に実現できます。
それぞれのアプリに一長一短(費用対効果含め)があります。
使用目的と予算に合わせて導入を検討してください。

音声データファイルの編集
アナログな編集
音源(再生機器)の PHONE/LINE-OUT とサンプラー(SR-404SXなど)の LINE-IN を接続し、 音声データを作成している学校は多いでしょう。
音源とサンプラーの間にミキサーを挟むことで、サンプラーに記録する音声を加工することができます。

<例>
・最初からFI/FOで保存しておきたい
 →フェーダーを手操作して録音する。
・録音した人の声とBGMを絶対に絶妙のタイミングで流したい
 →ミキシングをやってみて、ベストテイクをひとつのパッドに保存。
 
・上手からだけ音を出したい
 →ミキサー出力の左右バランスをRに振り切って録音。

LINE-OUT→ミキサー→LINE-IN の流れはアナログ信号ですから、機械を経由するほどに、 多少の音質劣化、ノイズ混入は避けられません。

デジタル編集
PC/タブレット+アプリの利点のひとつに「音声データファイルをPCで(視覚的に)編集しやすい」ということがあります。 ひとたびデジタルデータ化された「音」は、ピークレベルを揃えたり、先頭の無音部分をカットしたり、複数回リピートさせたり、音源レベルでFI・FO・CFさせた音をあらかじめ作っておいたり……デッキ+ミキサーでは大変な苦労だった作業が比較的簡単に実現できます。
ただし、デジタルデータに関するそれなりの知識が必要になります。
①音源(CD)
  ↓
②PCへの取り込み作業~Media Player、iTundesなど
 音声ファイルが作られる
(.wav形式 .mp3形式 .acc形式 .wma形式 など)
  ↓
③必要であれば音声編集ソフトによる「加工」
・Audacity(無料)※おすすめ
・WavePad(体験無料 → 5,000~8,000円)
・Sazanami(無料) for Windows
・動画編集ソフトでも音声編集が可能
  ↓
④タブレット+サンプラーアプリへの「登録」
 サンプラー(SR-404SX)へのインポート

コンクールで使用する音響は、著作権への強い配慮が必要です。
加工・改変についても著作者への許可が必要になる場合がありますから、注意してください。

「加工」とみなされる例
 ・原曲からキーを上げる/下げる
 ・再生スピードを上げる/下げる
 ・曲の途中をカットして前と後ろをつなげる

「音声ファイルを作る」というのがポイントです。 CDから音楽等をそのまま再生し、ミキサー等を使って手動で操作する場合はとりあえずセーフ(黙認)という認識でよいのではないでしょうか。