音響の基本          

舞台音響の役割
演劇で使用される「音響」には次のような役割があります。

効果音(SE)
Sound Effect。劇中に必要な「音」の要素を補います。
自然音~風の音、鳥のさえずりなど
生活音~ドアの開閉、呼び鈴、電話、雑踏など
銃声、救急車のサイレンなど、舞台では瞬時に視覚化しづらい状況を効果音で処理するのにも使われます。
心理~現実に鳴る音ではないが、登場人物の心理や心情を暗示するグラスクラッシュ音や不協和音も含みます。

BGM,オープニング曲,エンディング曲
Background Music。 劇中の状況や登場人物の心理を補う楽曲。
適切なオープニング曲、BGM,エンディング曲は劇の期待/感動を盛り上げます。

ジングル
シーンの節目、場面転換の前後に入るような短い音楽。
例えば、喜劇的シーンのオチに入る「チャン、チャン!」のようなもの。

(暗転)ブリッジ
場面転換の間に流し続ける音楽。
場面転換が暗転である場合は特に、装置の移動や役者の板付きの気配を消すとともに、 せっかく掴んだ観客の心を離さないためにも、暗転ブリッジを流すべきです。

音響操作
・カットイン(CI)…ゼロでない音量から音が入る
・カットアウト(CO)…ある音量からすとんとゼロになる

・フェードイン(FI)…音量ゼロからだんだん大きくなってゆく
・フェードアウト(FO)…音量がだんだん小さくなりゼロになる


台詞との連携(BG)
アンプで増幅されスピーカーでホール内に響く音響は、役者の肉声よりも客席後方まで届きますし、 前方のスピーカー前にいる観客は、実はかなりうるさいのを我慢しています。
一般に、役者の台詞とBGMがかぶる間は音量レベルを下げます。

もちろん、ある曲をBGしている最中に一瞬大きな音でSEを入れたい、というような場合は1台の再生機器 (1チャンネル)では実現できません。 再生機器をもうひとつ用意して、別回路で音を出す必要があります。

クロスフェード(CF)/オーバーラップ(OL)
曲(または効果音)Aから曲Bへ移る時、
(曲AのFOが始まる→)曲BのFIが始まる→曲AがFOする
というふうに切り替わる変化の仕方。


この操作は、再生機器が二つ必要です。


ミキサーでCFを実現する

サンプラー(SR-404SX)は、1台の中で複数のパッドを独立したタイミングで鳴らすことができますが、 最終的な出力は LINE-OUT 1チャンネルにまとめられるため、 ミキサー側の操作で「音Aを再生中に、音BをFIで再生」というような操作はできません。
どうしても1台のサンプラーでCFを実現したいなら、あらかじめ音AをFO、音BをFIで録音して、タイミングよく再生すれば実現可能です。


サンプラーだけでCFを実現する

また、PCやタブレットで操作するサンプラーアプリには、アプリ画面上の操作でCFを実現できる製品もあります。

音量について
スピーカー出力(W)
スピーカーの出力能力は、ワット(W)で表現します。
市販の安価なラジカセは、左右の合計で2~4W程度のものが多いようです。
この程度の出力では、教室公演でも少し物足りないかもしれません。 CDコンポ、PC用、Bluetooth用のアンプ付きスピーカーだと合計出力30~40W以上になり、 教室公演であれば十分な音量が確保できます。
パワーアンプ+パッシブスピーカーの組み合わせであれば、数百Wの出力が可能です。
それだけの能力があれば、ホール公演や野外公演での自前機材持ち込み公演に対応できます。

デシベル(dB)
音の大きさを表す単位として「デシベル(dB)」という言葉を耳にします。
本来は「比」を現す言葉であり、基準レベルとの差が何倍かを表現しています。
人間が感じ取れる最も小さい音圧(20μPa)を基準に設定して、それに対して10の何乗倍か という計算によって、音の"強さ"の目安を表したのが下表です。

0 dB基準値 ほぼ無音(≦20μPa)
20 dB10倍 静かな寝息
40 dB100倍 図書館
60 dB1,000倍 ふつうの会話
80 dB10,000倍電車の車内
100 dB10万倍 地下鉄の構内
120 dB100万倍 耳元でジェット機の爆音

多くの音響ミキサーのフェーダーは、上から四分の一くらいの位置に「0dB」の目盛りがあり、 それより上が+、下が-のdBになっています。
これに関しては「0dB=音量ゼロ」なのではなく、「0dB=基準値の出力」という意味になり、 大会などでは、仕込みの段階でこのポイント付近を「歪まない最大音量を出せるレベル」に調整しています。
そこから逆算すると、ミキサーからの出力は、
+2dB~基準の1.25倍(歪む?)
+1dB~基準の1.1倍(歪む?)
 0dB~基準(最適音量に調整)
-1dB~基準の89%
-2dB~基準の80%
-6dB~基準の50%
-8dB~基準の40%
-10dB~基準の33%
-20dB~基準の10%
-∞ ~実質0%
というふうに変化します。
画像では0~∞の中間点が-15d付近であるように見えますが、フェーダーのツマミがこの位置にある時、 出力音量は0dBの半分ではありません。20%以下でしょう。
ただし、物理的な出力レベルの変化は、人の聴覚の感覚的な「聞こえ」と一致するわけでもありません。