電気の話           

演劇と電気
演劇にとって「電気」は意外に重要です。
音響・舞台照明には大きな電力を食う機材もあります。
劇場では、スタッフの方が仕込み、操作、安全管理に気を配ってくれるので安心ですが、 校内公演では、それらすべてを部員と顧問で注意しなければなりません。
大道具に電気的な仕掛けを施したくて ――例えば、実際に外灯が光る電柱、実際に差せば使えるコンセント付きの「壁」など―― 自分達でコードを買ってきて舞台上に電気を引くことがあるかもしれません。
・上演中に「ブレーカー」が落ちて芝居が台無しになった
・上演中にコードが焦げて火事になりかけた
・感電した
などの失敗、危険を避けるためにも「電気」に対する最低限の知識が必要です。

電流・電圧・電力
 電圧 [単位 ボルト(V)]
  電位差。電流を流そうとする圧力です。
  水道にたとえれば水圧に相当します。
 電流 [単位 アンペア(A)]
  機器や電線を流れる電気の量。
  水道でいえば水量(何ℓ)に相当。
  人体にたくさんの電流が流れると感電死します。
 電力 [単位 ワット(W)]
  電流が行う「仕事」の単位です。
  音が鳴る、光る、発熱する、モーターが回る等。
  水道でいえば……蛇口の大きさ。

 電圧・電流・電力の関係 電力(W)=電流(A)×電圧(V) 
   上の式を変形すると 電流(A)=電力(W)÷電圧(V) 

家庭用・教室用の電気には交流100Vの「電圧」がかかっています。 電源コードをコンセントに差して使う一般的な電気製品は、すべて交流100V用だと考えて差支えありません。
電気器具をつないだ電源ケーブルにどれくらいの電流が流れるかは、
電流(A)= 消費電力(W) ÷ 100(V)
で計算することができます。
例えば「消費電力100W」の電器具を使うということは、接続したコンセントから器具に至る電源コードに1Aの電流が流れるということです。

定格電流
通常の建物は、ひとつの部屋(体育館であればアリーナ壁全体、ステージ上といった区分ごと)で合計20Aの電流まで許容する設計となっています。
すなわち、ひと部屋で、
合計 20A × 100V = 2,000W(2KW)
の電気製品まで使用できるということです。 それ以上の電流が流れると、安全装置「ブレーカー」が作動し、部屋全体の電力供給が絶たれます。 (俗に、ブレーカーが「落ちる」と言います。)


それ以上に気を付けなければならないのは、電源コードやコンセントごとの「定格電流」です。これは、長時間連続して電気を流しても安全に使用できる限界量を指し示します。
市販の電気コード類、普通の家の壁面にあるコンセントは、太さに応じて「計10A以内」「計12A以内」「計15A以内」などという規格になっています。


定格が15A以内であれば、ひと部屋で使える許容範囲が20Aあっても、1箇所のコンセントに接続できる機器の合計は15A以内、消費電力でいえば合計1,500W以内に抑えなければいけないということです。 (差し込み口が2口、3口あってもその合計が15A以内)
一ヶ所2口のコンセント(定格15A)に1,000W(1KW)を2本つなげば容量オーバーです。 定格を超えた電流が流れ続けると、接続部分と電線が熱を持ち、最悪の場合、火事になります。 極めて短時間なら持ちこたえますが、やがて溶けてショートします。

ドラム式の延長コード(コード・リール)の場合、さらに細かい注意が必要です。
コードを巻いたままの状態で大容量の電流を流すと非常に高温になります。
そのままにしておけばコードの被覆が溶け、ショートします。
巻いたままで使用できる最大の電流を、「定格電流」といい、コードを出し切った状態で流せる最大の電流を 「限度電流」といいます。

定格電流は5A~7Aが多く、7Aであれば、巻いた状態のドラムに接続できるのは合計700Wまでです。 1,000W(1KW)の灯体は1灯でアウトです。
ある程度以上の大電流を流す場合は、必ずコードを出し切って使用します。(床に、ゆるくまとめておけばよい)

タコ足配線に注意
教室公演では、タコ足配線で電気を取らざるを得ないこともあるでしょう。 その場合も、事故を未然に防ぐためには、
・各電源コードに流れる電流の合計(総ワット数÷100)
・各コンセントを通過する電流の合計
・一部屋で使用する電流の合計
を厳密に計算する必要があります。