大会での上演 舞台美術②   

「幕」について
基本編 舞台美術◇舞台の名称」も併せて読んでください。

群馬会館の下手側袖の様子

暗転幕
暗転中に大がかりな装置転換が必要で、その作業の様子を観客には見せたくない場合、暗転幕を使用します。
ホールによって、緞帳と同じように昇降するものと、中割幕と同じように両側から開閉するものとがあります。

袖幕
袖幕は、舞台袖の奥が見切れないようにするための幕ですが、 大道具とともに舞台空間を形成し、アクティング・エリアを決定する役割も担っています。
多くのホールで、プロセニアム・アーチより1m~2m程度内側まで動かすことができます。 これを、袖幕を「せめる」といいます。
袖幕をせめることによって、アクテイング・エリアをコンパクトにすることができます。 (舞台装置の少なさをゴマカスこともできますね。)
大会・合同公演では、他校が袖幕の位置を動かす可能性があります。 自校のリハーサル時に袖幕の位置を適切に調整し、本番前に位置合わせをしておくべきです。

中割幕
前から2~3枚目の袖幕と兼ねていることも多いのですが、他の袖幕と異なり、 舞台中央まで伸びてアクティングエリアを前部と奥とに分割します。 中割幕より奥に設置された大道具は完全に隠され、中割幕が完全にしまった舞台は、 黒いカーテン状の背景を持つ、前後に狭い空間となります。
中割幕は、「主舞台とは別空間となる場面」を比較的手軽に表現できる方法です。 大きくて上演中には動かすことのできない大道具を一時的に見えなくしたい時、 中割幕は便利です。
例えば、「基本は室内だが、一時的に屋外のシーンがある」作品において、 部屋の装置はしっかり作り込み、屋外のシーンでは中割幕を引いてその前で演技、といった使い方ができます。


 中割を引いて、ピンスポットで照らす。
 後ろの大道具が隠される。

幕は触らない
劇場の袖幕・中割幕は大きな一枚布です。破損したり、汚したりしたら大変な損害となります。
ホールの許可なく、大道具と袖幕とをテープ、クリップ、安全ピン、洗濯バサミ等で固定してはいけません。 大道具を動かす時、外すのを忘れてうっかり引っ張って破損してしまうことがあります。
また、大道具が倒れてしまった時、あるいは搬出入の時に、大道具(パネル等)で引っかけて破損してしまうことも多いものです。
原則として「何があっても触れない」つもりでいるのが一番です。

大黒・ホリゾント幕
舞台の最も奥に吊り下げられた白い幕がホリゾント幕です。 高校演劇ではホリゾントライトが多用される傾向にあります。 ホリゾント幕(の白さ)を見せたくない場合、その前に黒い幕を引くことができます。 これを「大黒(おおぐろ)」と呼びます。
大黒を引いた舞台は全体が黒くて落ち着いた空間になり、コンパクトな照明効果が高まります。
ホリ幕のまま
大黒を引いた

一文字幕(いちもんじまく)
客席から舞台上方の照明機材やバトンが見えないように隠す幕です。
吊り物を昇降させる時に引っかかることがあります。吊り物の厚さに注意してください。

吊り物
舞台上方から垂らす大道具を「吊り物」と呼びます。
吊り物は、「吊り物バトン(美術バトン)」にワイヤーで吊り込みます。
バトンは、幕間、上演中を問わず手動または電動で上下させることができます。
床の上に置く大道具であっても、転倒防止のために上からも吊る場合があります。

右側の「木」はバトンから吊るされています

吊り物は、落ちてきたら大怪我必至。吊り物バトンに装置を吊り込む時は、様々の注意が必要です。
十分な強度を持たせて下さい。 すずらんテープは論外として、できれば釣り糸や針金ではなく、 適切な長さに端末処理した金属ワイヤーとカラビナを使って吊りましょう。

端末処理をしたワイヤーとカラビナ

上演の途中で、装置が「見切れ」なくなるまで「飛ばす」場合は、吊り物の幅に注意して下さい。
吊り物バトンの前後には、照明用のバトンから照明機材(灯体)がたくさん下がっています。 照明バトンの前には一文字幕が下がっています。 その隙間に収まるくらい薄い装置でないと飛ばし切ることができません。

雪かご(雪布)
舞台の上方から紙吹雪、"枯葉"などを落とす仕組みに「雪かご(雪布)」があります。
舞台上方(「簀の子」「ぶどう棚」などと呼ぶ)に人が出向いて降らせるのがベストですが、 それが不可能なホール、スタッフ以外の立ち入りを禁止されているホールもあります。
その場合、下からヒモ(呼び縄)を使って操作するような装置を作ります。
なるべくバトン自体が揺れないように工夫する必要があります。
吊り物バトン自体が数本のロープで吊り下げられているだけですから、 水平方法(前後・左右)にはわずかな力を加えるだけで揺れてしまいます。 前後に大きく揺れてしまうと、前後の照明器具などにぶつかります。


また、雪を降らせるタイミング前にちらほら舞い落ちてきてしまっては興ざめですから、 それまで止めておく仕掛けもあったほうがよいでしょう。
理想は、呼び縄を「上下に」引くと、仕掛けが「上下に動いて」雪を降らせる形です。


そうした複雑な仕掛けは仕込むのに時間がかかります。 吊り物処理も含めて時間内で収まるよう、本番の搬入計画、リハ―サルの計画は綿密に立てて下さい。